コンサート

Max Summer School in Geidai 2023

日時:2023年8月4日、18時会場、18時30分開演
場所:東京芸術大学、千住キャンパス、第7ホール
〒120-0034 東京都足立区千住1丁目25−1 (Google Map)
入場料:無料

演奏者略歴

迫田圭

東京音楽大学大学院に給費奨学金を得て入学、修了。
東京音楽大学コンクール入選、第28回市川市新人演奏家コンクール弦楽器部門最優秀賞。プロジェクトQ第10章に参加。2018年に出演した第三回伊左治直個展 〜南蛮劇場〜 が第18回佐治敬三賞を受賞。
若手作曲家の新作初演にも数多く携わっており、サントリーサマーフェスティバル内の芥川作曲賞選考演奏会ではソリストを務める等、精力的に活動している。
現在、おーけすとら・ぴとれ座にてコンサートマスターを務めている他、町田コダーイ音楽院、WE LOVE MUSIC、神奈川県立相模原弥栄高等学校にて講師を務める。

井口みな美

国立音楽大学演奏学科鍵盤楽器専修(ピアノ)を卒業、同大学院修士課程伴奏科を修了。
第17回日本演奏家コンクール大学生ピアノの部第1位受賞。同時に横浜市長賞、読売新聞社賞を受賞。第1回KピアノSoloコンクール第3位受賞。現代音楽演奏コンクール“競楽XIV”ファイナリスト。
これまでにピアノを遠藤陽子、宮下ゆかり、中村和枝、三木香代の各氏、作曲・作曲理論を山口博史、藤井喬梓、今村央子の各氏に師事。
ソロ、室内楽、器楽伴奏等を中心にフリー奏者として幅広く活動している。現代音楽ピアニスト集団「ピアノのアトリエ」所属。

Hyun-Mook Lim

Hyun-Mook Limは主に現代音楽を演奏するピアニスト・パフォーマンスアーティストである。現代音楽の演奏を始めた以来、数々の作曲家と協業しながら作品を初演・演奏し、或いは献呈されてきた。彼女は現在東京に滞在しながら韓国と日本両方を中心に活動し、最近はフィクスド/ライブエレクトロニクスとピアノのための作品を用いた演奏経験の拡張を中心に演奏活動を続けている。

曲目解説

“Agency” ― VRとインタラクティブ・ライブエレクトロニクスのために/Can Li (2023)

本作品はVRヘッドセットを用いたインタラクティブ・ライブエレクトロニクス作品である。VRヘッドセットでは、バーチャル環境にある文字情報、オブジェクトなどを表現することで、出演者の具体的な動作や動きのタイミングを提示し、出演者の実際の動きによって音楽を合成する。
コンセプトについて、ソーシャルネットワークの急速な発展の過程で、ソーシャルネットワークに参加する個人が他の個人を自由に評価する能力を持つことによって、個人の自己顕示欲が拡大し、それに伴って「オピニオンリーダー」と呼ばれる存在が現れる「オピニオンリーダー」の存在により、一部の個人は盲従、また別の一部の個人は影響を受けたり恐怖したりすることで集団的な沈黙を示すなど、自己顕示欲の喪失に関する矛盾が現れる。本作品はこの現象に注目する。

Can Li

中国江蘇省生まれ。 2018年より音楽音響創造学科後藤研究室に在籍。センサーやIoTを使ったインターフェースデザインやインタラクティブな音楽インスタレーションやパフォーマンスに注力している。

「シグマグラ」 ― ヴァイオリンと電子デバイス、コンピュータのための (2023)

この曲は音の分解と合成をテーマにしています。ヴァイオリン奏者と電子音楽奏者の2名が演奏する音をマイクで収音し、その音をコンピュータによる音響再合成のプロセスを通して複数のスピーカーより出力します。奏者(人間)は反復、再帰プロセスを試みて演奏をしますが、最終的な音の出力はコンピュータが選択、決定し、奏者が望んだ音楽の流れとは似て非なるものを生成します。奏者の演奏は楽曲を構成する表現要素の一つでありながら、同に全く違う表現にも聴こえてきます。曲の時間構成は作曲のプロセスにおいて決定されていますが、マクロの部分においてはコンピュータが都度決定し演奏します。

磯部英彬

1982年山梨出身。作曲家、メディアアーティスト。作曲及び音響技術、コンピュータ音楽を土屋雄に師事。コンピュータを中心とした作曲活動のほか様々な他の作曲家の電子作品のオペレータを担当する。自身の主要な作品は日本をはじめ、オランダ、ドイツ、韓国などで演奏されている。またセンサーを活用した電子楽器の製作や演奏補助機器等の研究、開発を行い、これまでに、ピアノのための「ソステエヌートブロック」、スネアドラムのための「スナッピーペダル」、スピーカーのための「 isobeレール」などを開発、また様々な作曲家、演奏家とのコラボレーションにより、作曲家の山本和智と開発した「ヴィデオロン」、星谷丈生と開発した「hosiyaボード」、トロンボーン奏者の村田厚生と開発したトロンボーンのための「murataセンサー」などがある。 電子音響音楽演奏会マキシマム主催。東京音楽大学非常勤講師。

“Whisperscapes” ― 尺八、コンピュータと電子オブジェクトのための/Leonid Zvolinsky (2023)

この曲は、最近の認識できないほど変化した世界と、アイデンティティ、新しい意味、そして新たな「私」の探求についての音による考察である。音楽において、これは楽器がもはや自分自身に属さず、いかなる意味においても自分自身であることができないことを意味する。
“Whisperscapes”はアルゴリズム的作曲法と経験的作曲法のシナジー効果を探究する作者の創作の続きである。まず経験的方法で基となる素材を作った後、Max環境のBachライブラリを使用してそれを再現するためのアルゴリズムを制作した。
電子的なオブジェクトはArduinoで作り、その生成と応用は、作品全体に作用するシステムによって規制されている。

Leonid Zvolinsky

モスクワ音楽院作曲家首席卒業、リトフンチンテレビ・ラジオ大学音響映像芸術サウンドプロデュース科修了。 現在東京藝術大学大学院音楽研究科(音楽音響創造)後藤英研究室の修士2年。
Max、Arduinoなどの様々なアルゴリズムやシステムを取り入れた現代音楽やサウンド・アートに取り組んでおり、人の聴覚特性や音の錯覚効果と芸術への応用に関する研究を行なっている。

“À petits pas“ -ピアノとライブエレクトロニクス/ニコラ・ブロシェック(2016)

“À petits pas“は、ピアノとエレクトロニクスのダイナミックな可変性を組み合わせた教育的なライブエレクトロニクス作品である。全6分の作品は、若い演奏家にクラスター奏法を習得してもらうことを目的としている。2016 年に初演されたが、今回の演奏会のために加筆修正した。
この作品では、ピアノを中心として音楽構築要素としてのクラスターを探求し、実践する。一方、エレクトロニクスのパートはリアルタイムでピアノ演奏に応答し、拡張する没入型の伴奏として機能する。
4つのスピーカーによって4 チャンネルサウンドシステムを使用し、電子音は慎重に分配され、聴衆を豊かな音響環境に包み込み、作品の体験をさらに高める。リアルタイムの音響処理技術を使用し、ピアノとエレクトロニクスのパート間で動的な相互作用が生み出される。

Nicolas BROCHEC

ニコラ・ブロシェックはフランスの作曲家、ソフトウェア開発者。現在、東京藝術⼤学⾳楽⾳響創造科に博⼠学⽣として在籍中。作品はフィルハーモニー・ドゥ・パリ(FR)を始めスペイン、オーストリアなどヨーロッパ各地で演奏されている。 画像から着想を得ることが多く、ノイズと和声を組み合わせる作品作りを⽬指している。現在の研究テーマは機械学習に基づくミクスト⾳楽における奏法判別と動的な⾳響変調について。楽譜出版社Notes en Bulles にて⾃作品が出版される。
nicolasbrochec.com

「下沈の鯨」-ピアノとライブエレクトロニクス/顧 昊倫

「想像」というのは未知の感覚世界を探索する原始的衝動であり、抽象的特徴の持つ音楽はさらにその中の最も原始的な存在だと思われる。しかし、固有観念において、音楽は普通に時間的構造に依存し、その存在によって、視聴者は導かれ、作品を理解させていく。想像は違う。考えられたもの、聞かれたもの、見られたものまでにより、時間に頼らず、人間は心で仮想風景を描いたり、膨大な物語を築いたりする。本作品はこの発想をもとに、仮想劇場といった概念と融合し、音色の差異、及び舞台表現によって風景の変化を表す。このような「無進行感」に近い体験はまるで鯨が深海に沈んでゆき、緩やかに流れている風景に身を任せ、海流、魚の群れ、星河、チラチラする光と影と流れる音が巨大な体と共鳴しつつ、残響を生じ、漂っていく。

顧 昊倫

中国・蘇州市生まれ。2017年、上海音楽学院音楽設計と制作科を主席で卒業、2020年東京藝術大学音楽音響創造修士課程修了。現在、同大学院博士課程在籍。文部科学省奨学金(SGU枠)奨学生、ロッテ財団奨学生。
2021年第3回上海国際電子音楽コンクール(IEMC)電子音楽作曲部門第1位。これまでに、作曲家として日本国立科学博物館電子楽器100年展、未来・伝統ニューメディアマスタークラス(上海)に招待され、作品は、上海国際電子音楽週間(EMW)、ニューヨーク電子音響音楽祭(NYCEMF)、国際コンピュータ音楽会議(サンティアゴ)、アンサンブル・アッカ20周年記念コンサート等に入賞、入選、世界各地で演奏されている。第7回両国アートフェスティバル委嘱作曲家。
これまでに作曲を秦毅、尹明五、陳強斌、Eric Arnal、西岡龍彦、後藤英の各氏に師事。

“Collidepiano” -ピアノとライブエレクトロニクス/後藤英 (2023)

セクション1. 微分音–イントロダクション (1:05)
セクション2. 微分音2 – エチュード (3:08)
セクション3. 微分音3 – グリッサンド (1:56)
セクション4. グリッサンド2 – エチュード (2:00)
セクション5. 細胞分裂のアルゴリズム – エチュード (2:03)
セクション6. 上行型のモーフィング – エチュード (3:00)
セクション7. 速い同音反復 – エチュード (1:34)

この作品は、リゲティの《ピアノのための練習曲(Études pour piano)》の影響により作られた作品である。
タイトルのCollidepianoとは、「Collide(衝突する)」と「ピアノ」が組み合わさった造語で、文字通り人間が奏するピアノとコンピューターがぶつかり合うストラテジーが考えられている。
この作品では、MaxのBachライブラリーによるアルゴリズミックコンポジションを用いて構成された。
この作品は組曲になっており、それぞれのセクションが一つの明確なアイデアに基づき作られている。それぞれのセクションの概要は以下の通りである。

  • セクション1. 微分音–イントロダクション (1:05)
    曲と言うよりか、むしろ微分音を聞き分けることが容易になるように耳を慣らすための序奏部である。
  • セクション2. 微分音2 – エチュード (3:08)
    微分音を用いた作品はここから始まる。8分の1音の微分音と4分の1の微分音、および通常の音の3声部が重ねられているエチュード。
  • セクション3. 微分音3 – グリッサンド (1:56)
    微分音を用いてグリッサンドを追求している。シェパードトーンのような効果を目指している。
  • セクション4. グリッサンド2 – エチュード (2:00)
    微分音を用いずにグリッサンドを試みた作品。セクション3の第2バージョンと考えられている。
  • セクション5. 細胞分裂のアルゴリズム – エチュード (2:03)
    タイトル通り、細胞分裂のアルゴリズムを用いて作られた作品。作曲したと言うよりはアルゴリズムが作曲した作品と言っても過言ではない。
  • セクション6. 上行型のモーフィング – エチュード (3:00)
    あるパターンからもう一つのパターンまで、曲全体を通して徐々に変化していく作品。
  • セクション7. 速い同音反復 – エチュード (1:34)
    限界を超えたピアノの速弾きにより、狂乱した感じを表している

後藤 英

作曲家、ニューメディア・アーティスト。国際的に評価されており世界活地で活躍。刺激的 な作品で新たなテクノロジーと関連させて発表している。フランス、パリにあるポンピドゥ ー・センターのIRCAMの招待作曲家、研究員、ボルドー芸術大学の准教授を経て、現在は東京 芸術大学の准教授。  主な賞歴は、ボストン・シンフォニー・オーケストラ・フェローシップ、タングルウッド音 楽祭より、クーセヴィツキー賞、ワシントン州のマルゼナ国際作曲コンペティションにて第1 位、ドイツにてベルリナー・コンポジション・アウフトラーゲ1994、パリのユネスコで行われ た、IMC国際作曲家会議にて入選、フランス政府よりDICREAM、ドイツ、ベルリンのミュージ ック・シアター・ナウ・アワード2008にて受賞、フランス、バン・ニューメリック4、アンガ ン・デ・バン・デジタル・アート国際フェスティバルにて、「OFQJダンス・ニューテクノロ ジー賞」を受賞、2010年ブラジルのFileフェスティバルにてFILE PRIX LUXのElectronic Sonority Honor Award 賞、2011年イタリアにてAction Sharing 2の大賞を受賞、2013年KAO国 際キネティック・アート・コンペティションにて第2位、同年オーストリアのアルスエレクト ニカにてデジタル・ミュージック&サウンド・アートの栄誉賞を受賞などが挙げられる。作品 は世界各国の音楽祭、レゾナンス/IRCAM、タングルウッド音楽祭、ICC、SONAR、 Haus der Kultures der Welt, ISEA、NIME, ヴェネツィアビエンナーレなどにて演奏されている。
http://gotolab.geidai.ac.jp/